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雨の香り。

そこに在ればいい。

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2024/05/19(Sun)08:47

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安らかに。

2008/07/10(Thu)20:29

長く生きる夜
深い森の下で、さまよう
微かに緑を視ながら
足音を心に落とし  亡霊のように



肌寒い
湿った木々の匂い
手の平が 何も掴めない感覚
何処でも無い場所から聞こえてくる虫の声は
体をすり抜け
薄い不安が 森の空気に広がる


そうして、生きた静寂は眠る




目を閉じると
内側の視界が溶けて
外側の暗闇へ、意識が歩く

聞こえるはずのない足音が 雨音のように響く

その響き、長い森の夜に沈む頃



形無き足が佇んだ
月明かりの届く、木々の無い土の場所




風化した木片に浮かぶ影
まだ座れるような椅子や
人の形をした草むら
腕の位置に散らばる 数枚の写真



そうして
僅かに残った感情が目を開いた





家のあった場所




動かない瞼の彼等は
あぁ  生きていただろうか 。

 

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No.19|Comment(0)Trackback()

夜浅く。

2008/06/30(Mon)22:18

若い暗闇が歩く
情を含んだ冷たい湿り
体無きことの憂い
そんなことを 霧雨にして
ただ、静かに



その くすんだ吐息
昇る

くすんだ青色の





無き音の音
その響きに耳を澄ましながら
若い暗闇は過ぎていく

 







あぁ   。



No.17|Comment(0)Trackback

暗闇に淡く燃ゆる

2008/06/10(Tue)20:02

夜の椅子に座り
静寂の海を眺めている

彼方まで濡れた時間
群青色した魚が 揺ら揺ら
彼の深い瞳は滴って 水溜りの月を映す


ささやかな
ささやかな


私の悲しみを食べてください
体の奥の 奥の奥
小さな波紋を産み出す悲しみを



彼は
涙 こぼす
それでも何も言わずに泳ぐから
その影を見つけられないのでしょう



境目の無い海
溶けていく花々
群青色した鱗が 輝ら輝ら



ささやかな
私の悲しみを食べてください
手首の向こう 指の先
見えない泡を吐き出す悲しみも
見えない底に向かって揺ら揺ら
彼を通りすぎてゆく




冷えた暗闇に
仄か 雨水の香り
静寂の海に降る


消えていく
水溜りの月が崩れていく

消えていく
悲しみが 喉を伝う



私達は、
ただの青い愛。

No.11|Comment(0)Trackback()

誰も居ない場所。

2008/06/10(Tue)19:03




灰の雨 降る
静かに 空気を殺していく


灰の雨 降り
肩に積もる
遠くから 石の割れる音が聞こえる



立ち尽くす私
包帯のとれた私
空洞のような目をしている
露出してしまった肌から
少しずつ水分が消えはじめる


・・・あぁ 灰が隠した貴方は死んでいくでしょう


それなのに私は
まだ滑らかな肌を削り
貴方に水をかけているのです
 ただ、色づいていくばかりだけど



雫が垂れるたび
砂のように崩れていく
灰に近づく貴方は死んでいるでしょう
私が吸った空気もそう

あぁ だから私も死んでいくでしょう




光無い此処に広がる
脆い 脆いもの

流れていた川や
色のあった草花
感情や
感覚



枯れてしまった傷口
手首を崩しても


灰の雨
赤く色づいた灰の上に降る
その上に重なるように
倒れてゆく





・・・乾いた音をたて
小さく舞い上がった

やがて消える砂塵。



No.10|Comment(0)Trackback()