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雨の香り。

そこに在ればいい。

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2024/05/06(Mon)11:01

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火葬された思い出。

2008/09/23(Tue)20:43

夕暮れ時
ワイン漬けの私はふらふらとあても無く歩いていた
今朝 知人が死んでいたような記憶があるが
酔いの所為か はっきりと思い出せない

紅葉の絨毯の下
見え隠れする石畳の並木道を
躓きながら歩く
乾いていない喉を
無駄に潤そうと、瓶をかかげるも
ほとんど口に入らず
白いシャツは赤く染まってしまった

足取りも目線も定まらない
妙な形の月と思っていたら
躓いて掴んだ柱の上 背の高いただの外灯であった
小さく溜息をついた後 何か焦げた匂いに気が付く

私はまた ふらふらと歩き始める


そのうち 壊れた教会のある
広い焼け跡にでた


屋根は無く、外壁は崩れ、ただ風が吹いている
椅子の形の炭や
何であったかわからない木片
余りにも細い木になって残った
扉であったであろうというそれを見た


そして私は
何時からであろう その教会の中に居た


崩れていたはずの外壁は重厚に聳え立ち
姿の見えなかったステンドグラスが規律よく並ぶ
無いはずの天井の下
艶やかに光を放つ茶褐色の椅子達には
光無い人達が座り
皆 教壇に立つ、裸の子供を見つめている

その顔をもっと近くで見たいと
また ふらふらと歩きはじめ、

歩きはじめようと 足を踏み出した時

突然 何かが割れる音が
大きく響いた


降り注ぐ硝子片
ステンドグラスの一つが無くなっていた
割れた位置に近い椅子の彼等は
その体で雨を受け 血を流している
赤くなりながら 裸の子供を見つめている

私が足を進めるごとに
ステンドグラスは割れ
彼等は赤く染まっていく
誰とも目が合わないことが
私を現実に留めていた


あの紅葉に代わり
今は硝子屑が 床を彩る
私が子供の前に立つ頃には
全てのステンドグラスが無くなっていた



あぁ 少女であった
道化師の化粧をしていたようだが
剥げてしまっている
僅かに下を向き
虚ろな目を 遅いリズムで瞬いている

美しかった
私は彼女の美しさに恋をした

体の中の小さな炎が
服に染み込んだワインに引火して
やがて教会も包み込んだ
悲しいほどによく燃えた

私達はその場で式を挙げた
キスをし、
手を繋いだ
私達は抱き合った


私は泣いた


あぁ あぁ 死んだのは 彼女であると。

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No.32|Comment(2)Trackback()

浜辺から想う。

2008/09/17(Wed)00:21

雲海の水平線は揺らめいている
重み無い砂浜の上で私は踊る
時折視界に入る 小さな穴が
私に重力を与えている
 

しなやかな腕の動きも
軽やかな足の動きも
それ故のもの
 

その動きと共に生まれる微かな音達
あぁ 今は彼等だけ
家族のように想いながら

 

重み無い砂浜の上で私は踊る
僅かにだけ残る足跡も
一瞬後に消えてしまう

 

私の右胸から零れた、あの小さな鈴は
もう地に着いたでしょうか
雨というものに濡れ
錆付いたりしたでしょうか


砕けてさえいなければ
きっと 美しい音を鳴らしたのでしょう



雲海の水平線は揺らめいている
潤った絶望を含んでいる
 
 

私は踊る
 
 

足踏みの音が鳴る
 
 

私は踊る
 
 

幸福な孤独に 包まれている。
 

No.29|Comment(4)Trackback()

三つの花。(手直し版)

2008/08/24(Sun)00:32

入り口の無い廃墟の前
私は屍に足をかけている
 

三階の辺り
三つの窓のうちの
一つの窓の隅にある鉢に
枯れかけの花が垂れている
鉢は焼けた風を受け 不安定な音を立てている


下に無数に散らばっている瓦礫
花が枯れ 花弁が全て散った時 あの鉢もそうなるのだと
私は、元から知っていたように 感じ 理解した 
 
 

太陽が眩しい
手で影を作ろうにも 小さすぎていけない
今はカタカタと 音だけが聞こえてくる


私は屍の上に立っている
足元より少し先の
白濁を飲み込んだ眼球がこちらを視ている
私達は見詰め合い
私だけ目を逸らした



太陽は雲の向こうに
辺りは薄い影に包まれていく
 

縁の鉢から、ゆっくりと降る 枯れた花弁

それを視た私は
ゆっくりと 澄んだ絶望に心を委ねた




やがて 二羽の烏が来て
私達の頭上で円を描いて飛ぶ
姿を現した太陽が 彼等の黒をさらに濃いものにする



遠く 遠くから聞こえる足音
低く 低く響く


 

あぁ 時間がたって
あの烏の姿が影と融けてゆくまで
 

次の朝、二つの屍のうち
どちらも「私」で無いように
今はただ目を焦がす
 


二つ目の鉢
二つ目の花を想う。
 

No.27|Comment(0)Trackback

感傷の痂。

2008/08/16(Sat)00:09

みないってしまう

それはまた私に変化を与え
彼等には憂いを与えるかもしれない

それを美しいこととする私の意識と

ただ辛いと想う私の心が

空気を通して 感じ合っている


言葉と愛で彼等を側に留めることは
ただ悲しく

彼等が唯一であると
伝えることも

それを仄めかすようで悲しい




みないってしまう



それを 美しいと。







No.25|Comment(2)Trackback

三つの花。

2008/08/13(Wed)17:33

私は屍の上に立っている
入り口の無い廃墟の前で
焼けた風が吹く
 

三階の辺り
三つの窓のうち
一つの窓の隅に在る鉢から
枯れかけた花が垂れている
 

ただ 太陽が眩しい故 
 余り上を見ていられない




汗は淡白な音を立てて落ち
屍に染みが出来る  やがて消える
 

足元より少し先の
白濁を飲み込んだ眼球がこちらを視ている
私達は見つめ合い 
私だけ目を逸らした




太陽は雲の向こうに
辺りは薄い影に包まれていく
 

縁の鉢から降る 干乾びた花弁
ゆっくりと落ちて来るそれを視た私は
 

ゆっくりと 澄んだ絶望に心を委ねた


 


やがて2羽の烏が来て
私達の頭上で円を描いて飛ぶ
姿を現した太陽が 彼等の黒をさらに濃いものにする



遠く 遠くから聞こえる足音
低く 低く響く


 

 あぁ 時間がたって
あの烏の姿が影と融けてゆくまで
 

次の朝、二つの屍のうち
どちらも「私」で無いように
今はただ目を焦がす
 


二つ目の鉢
二つ目の花を想う。
 

No.24|Comment(2)Trackback()