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雨の香り。

そこに在ればいい。

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2024/04/20(Sat)10:01

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夜の香り

2015/09/04(Fri)14:17

虫の鳴き声が静寂を深くしている
木々と土との境界が溶けていくと共に
それらの水分もまた 暗闇のものになってゆく

森に居らずとも森を感じている
深く息を吸い込む度 細胞の奥の思い出が 全身を巡り 私に辿り着いてくる
高揚と不安が風と共に過ぎて 
また 安息に返す
 
潜むものは 潜んだままで良いと 
夜は落ち着いてゆく
染み込むように しかし どこまでも遠く。  
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No.55|未選択Comment(0)Trackback

子供の声

2015/02/05(Thu)17:12

帰り道の途中に
石を集めた 小さな山ができていた
周りにも円を描くように 石が並べられている


毎日、それを見ているうちに
祀られている、と 心の縁に感じるようになった
風の日も 雪の日も 雨の日も
過ぎてしまえば 変わらずに そこにある


家々の間を通る 細い道
風が通り過ぎてゆく


何処かに 神様が住んでる と。

No.53|Comment(0)Trackback

2015/02/05(Thu)17:12

張りつめた空気の中から 空気が生まれ
膨れ 膨れて また張り詰める


中心では 石が浮かび 僅かに振動している
振動は空間に広がり 綻んでゆくが
すぐにまた 膨れ 膨れて 張り詰める


繰り返している
時折 ガラスを引っ掻いたような高音が 石から発せられ
ひび割れ 欠片が 落下してゆく


繰り返している
高音は果てまでいっては返ってくる
行き場のない
行き場のない故に


欲している。

No.52|Comment(0)Trackback

悪夢

2013/12/02(Mon)00:55

蟻がこちらを睨んでいる
底知れぬ沼のような深い色の姿であり
その瞳は、死体しか見てこなかったかのように、暗い
一切の感情を持たず、ただ僅かな餌をかじっているだけの彼奴が 睨んでいる
何か得体の知れぬ恨みのようなものが その沼の底に沈んでいるようで
目も逸らせず
蟻と私は ただ同じ距離を保ったまま
互いに、見つめ合っている

こちらを見ている 或いは、この方向に頭が向いているだけなのだが
私には感じられる 彼奴は、睨んでいる
子供の頃、何匹も蟻を殺してきたが 違う 
恐らく、そういうことではない

このまま放って置いても良い
幾ら私を憎もうが 彼奴は私に傷ひとつもつけられない
けれど 蟻の瞳はただ一点を捉え
私の魂を殺そうとしている
取り返しのつかない気がして ここから動けない

やがて子供の遊ぶ声が聞こえてきて
どこか救われたような気になったのも束の間
走り去る子供達 呆気なく蟻は潰された

死骸を見つめても
底知れぬ恨みが、ここに詰まっていたとは思えず
本当に取り返しのつかないことになったような気がして
私は 取り残されてしまった。

No.50|Comment(0)Trackback

呼吸

2013/04/09(Tue)00:44

薄い藍色の雲が覆う空から、暗闇が降りてきている
緩く走らせる車の窓を開け 吹き込む風の冷たさが
重たい頬から熱を持ち去っていく
湿り気の帯びた空気に人の匂いが含まれ すぐに自然へ還る

畑は影に隠れ 少しずつ呼吸を始めている
茂みの中で虫達が羽を震わせ その音にもならぬ振動を土は吸い
迫る夜の気配を匂わせている
昼間、家々の騒々しさに埋もれていた木々は
その葉の緑に幕を下ろしているにも関わらず 幹の脈動を感じさせるほどの 生命を孕みつつある 

目に見えぬ子鬼達が、そこいらで遊んでいる
行き交う車の音にかき消されるからいいんだと、小さく、無邪気に笑いながら
薄暗闇の中に灯る明かりの数々の 触れられぬ暖かさに、羨みを感じたりして
未だ枝の伸びているのみの桜の 満開の姿を想い 走り回る
ときめきが振り撒かれ 煌く 

窓の外での戯れが静寂を揺らす
停車し、戸を開け、この景色に足を踏めば 現実というものに 彩りが出そうに思うが
ヘッドライトの波に流され ゆっくりと 漂着は近づいている

潮騒のように 風は吹き込んで
何処とも知れぬ穴へ抜けていく
ただ 熱を持ち去っていくだけ。

No.49|Comment(0)Trackback